MBOとは
目標管理制度と呼ばれるMBOは、社員が自ら個人目標を決め、その進捗状況や達成度によって人事評価を決められるマネジメント方法です。
1954年に経営学者のピーター・ドラッカーが著書『現代の経営』で提唱した概念で、ビジネス上で広く導入されています。
MBOの特徴は2つあります。
1つ目は、社員が立てた個人目標が、組織の目標とリンクしていることです。
MBOは、社員に組織の一員であることと、個人と組織の成長を同時に達成させる自覚を持ってもらうためです。
そのため、組織全体の目標に対しより貢献できる内容の個人目標設定を推奨しています。
2つ目は、個人目標を社員自身で決めることです。
MBOは、Management By Objectives and Self Controlの略であり、日本語訳で自主性による目標の管理とあるように自主性を何より重要としています。
そのため、単なる企業のノルマ管理のための目標設定をするのではなく、自主的な目標設定で社員の意欲を育み、マネージャーはそのサポートやアドバイスをする役にとどめましょう。
MBOとOKRとの違い
MBOと似たマネジメント方法で、OKRがあります。
OKRとは、Objectives and Key Resultsの略で、日本語に直訳すると目標と主要な結果という意味です。
定性的な目標と定量的な進捗指標により、社員の目標を管理する方法です。
インテル社の元CEOアンドリュー・グローブ氏により提唱され、アメリカのシリコンバレーを中心に多くの企業で導入が進み、国内企業でも取り入れられるようになりました。
MBOと比べOKRは、目標や進捗指標の100%達成を前提としていません。
MBOでは、目標の達成度が人事評価や給与に直接結びつくため、100%達成を望みます。
しかし、OKRでは報酬制度と関連がないため、60%〜70%の達成を見込んで目標設定を行い、より挑戦的な内容にする傾向があります。
また、OKRでは目標を振り返る期間がMBOに比べ短いことも特徴です。
MBOは四半期または、1年単位で目標を振り返りますが、OKRでは1〜3か月間隔で振り返りを行います。
そのため、高頻度で目標を振り返ることにより、日々の行動と方向性のズレがないか、細かな軌道修正を行い確実に目標達成へ向かうメリットがあります。
さらにOKRでは、目標の共有範囲がMBOより広いことも特徴の1つです。
MBOは基本的に社員とマネージャーとの間で共有することが多いですが、OKRでは全社に公開・共有されます。
それにより社員に企業への貢献度をより強く感じてもらう効果があります。
MBOが広まった背景
MBOは、1960年代にアメリカの企業で導入が広まりました。
その後、日本の企業で導入され始めたのは、1990年代のことです。
当時日本は、バブル経済が崩壊し、多くの企業が人件費の削減や報酬制度や、年功序列の人事評価制度の見直しに伴い、MBOが広まりました。
それまでの日本は、成果ではなく職務の遂行能力で評価する制度でしたが、MBOの普及により目標に対する成果を人事評価や報酬の決定としての活用がされるようになりました。
それにより、人件費を抑えつつ業績を伸ばせる人事評価ツールとして、国内企業を中心に浸透したことが、MBOが広がった背景です。
MBOを導入するメリット
MBOは、日本ではすでに8割の企業で導入されていると言われています。
しかし、その効果は企業によりさまざまなため、メリットをしっかり抑えることが大切です。
ここでは、MBOを導入するメリットをご紹介します。
組織・チームの方向性を統一させる
MBOは、組織やチームなど組織の目標を達成するために、社員が自分の貢献できることを目標に設定します。
そのため目標の設定は、社員自身で行いますが、マネージャーに相談し組織の目標に沿った内容であるかを確認してもらい、方向性が適切であることの徹底が必須です。
そして目標達成を目指し、日々の業務に取り組み一定期間を経て、達成度の評価を行います。
よってMBOは、組織目標に基づいた個人目標設定より、組織・チームの方向性を統一できることがメリットです。
メンバー自身で自己管理ができる
MBOの目標管理では、組織の目標に沿った目標を個人で決めることと自主的なマネジメントが特徴です。
マネージャーが指示をして一方的に業務を遂行させるものではなく、社員1人ひとりが組織の目標について考え、達成に向け自分の目標を遂行します。
さらに、PDCAサイクルを繰り返し実行することで、社員は自己管理によるマネジメントのスキルが向上します。
モチベーションアップが期待できる
自分自身で目標を考え、達成に向けての行動計画を立てて実行をしていると、内発的に充実感や達成感、自己成長を感じられモチベーションにつながります。
MBOは、自主制に重きを置くため”やらされている”感覚ではなく、内発的な動機が高まりやすいメリットがあります。
パフォーマンスアップと能力向上が期待できる
MBOは目標の達成に向け、多角的な視点が必要となります。
職種により必要なスキルは異なりますが、さまざまな視点を取り入れ、期限内に目標達成を目指すことにより、効率的なパフォーマンス力と能力の向上の期待ができるでしょう。
目標達成への振り返りができる
MBOは、目標の達成度を人事評価に取り入れます。
そのため自ら立てた目標に対しどのような成果をあげたか、目標にどのくらい達成したかが明確になり、マネージャーは評価をしやすくなります。
また、定期的に達成度と振り返ることにより自分の課題や改善点も発見できるため、努力の方向性を確認できるでしょう。
さらにマネージャーは、評価のタイミングでフィードバックを行い人材育成で高い効果が見込めます。
効果的なMBO目標設定のポイント
MBOの目標を設定をしても、達成できないことや、上記でご紹介したメリットが感じられなければ意味がありません。
ここでは、効果が出やすいMBOの目標を、設定する際のポイントをご紹介します。
測定しやすい具体的な目標の設定
目標を設定する際は、数値や具体的な内容にすることで、評価がしやすくなります。
例えば、売上アップと漠然と決めても、達成度が測定しにくいでしょう。
そのため、現在の売上より100万円アップなど具体的な数値を入れると社員も取り組みやすく、途中経過の際も達成度がわかりモチベーションアップにもつながります。
達成できる目標のレベル設定
MBOの目標を設定するレベルは、努力や頑張り次第で達成できる程度が理想です。
現状のレベルで達成できる程度では、簡単に達成できてしまい目標に対しての意識が低くなり意味をなしません。
一方で、高い目標を立ててしまうと途中で挫折してしまい諦めてしまうでしょう。
そのため、知識を増やすことやスキルアップなどの努力をして、頑張った先に達成できるレベルが理想です。
達成する期間の設定
MBOを設定するうえで、期間を設けることも重要なポイントです。
いつまでに達成するのか、期限から逆算して目標達成までの行動を計画しやすくなります。
MBOの期間の中で、さらに細かく期限を設定し具体的な行動と目標値を設定すると、より確実に達成へ向けて頑張れるでしょう。
具体的に取り組む実践行動を設定
目標から実際に、取り組む実践行動を設定することで、「目標達成のために、今日は何をすべきか」がわかります。
目標達成までのプロセスは、PDCAサイクルで管理しましょう。
計画(Plan)→行動(Do)→確認(Check)→改善(Act)
このサイクルの中で、計画がMBOの目標設定にあたります。
ポイントは、行動(Do)にあたるところで目標に向けた具体的な行動ができるように、計画(Plan)の段階で併せて設定をすることです。
組織の目標に沿った個人目標の設定
繰り返しになりますが、MBOの目標設定では、組織の目標に沿って自身の目標設定を行うことが特徴の1つです。
そのため、企業の経営目標の達成に向けて貢献することが、社員には求められています。
1人で個人目標を勝手に決めるのではなく、組織の一員として企業の経営目標やチームの課題を踏まえ、社員1人ひとりが役割を理解し個人目標の設定が重要です。
MBOの目標管理方法と流れ
MBOの目標設定のポイントを押さえたうえで、実際にMBOをどのような流れで行えばよいのでしょうか。
ここでは、MBOの管理方法と運用の流れをご紹介します。
組織目標の共有
MBOの基点は、組織の目標です。
社員が個人目標を設定する際、組織目標の達成に貢献できるかを基に考えます。
そのため、まずは経営目標を決定し、会社全体に共有する必要があります。
はじめに、現場の管理職に共有し、その後管理職はメンバーに組織の目標の内容や意図を伝えましょう。
1人ひとりに合った適切な目標設定
社員が個人の目標を立てる際は、客観的な評価が可能かも考慮します。
目標の内容が具体的で定量的かを確認しましょう。
また、社員のモチベーションを維持させるため、目標が簡単に達成できる内容でないか、現実的な内容かもチェックします。
社員自身が、身の丈より少し高いレベルの内容で設定し、意欲的に取り組めることが重要です。
そのため、マネージャーはメンバーに合った内容の目標設定ができているか確認を行い、本人が取り組みやすいような内容になっているかのチェックをおすすめします。
1on1ミーティングや日報による進捗確認
個人目標の設定が完了したら、具体的な行動などを評価時期まで本人に任せっきりでは、不十分です。
社員が自主的に自身の目標に取り組んでいる間も、困っていることや、サポートは必要かを、日々の1on1ミーティングで進捗を確認します。
また、必要に応じて目標の軌道修正も行いましょう。
MBOは、目標の達成度100%を目指すものなため、日報や日々の面談でマネージャーと達成に向け話し合うことで、社員もモチベーションを下げることなく取り組める効果が期待できます。
適切な評価・評価後のフォロー&フィードバック
MBOの期限がきたら、マネージャーが適切に評価を行いメンバーにフィードバックします。
評価する際は、客観的に結果を評価しメンバーが納得し、課題や改善点があれば次回の具体的な行動に取り組みやすいように伝えます。
評価次第では、不満や悔しさを感じることもあるため、MBOの期間の頑張りをまず労い、フォローすることも大切です。
MBOの正しい運用方法のポイント
最後に、MBOをより効果的に運用するポイントをご紹介します。
メンバーの自主性を重要視する
MBOは、ドラッカー氏が「自主性こそ重要」と説いているように、自ら目標を決め自律的に努力やスキルアップをしながら目標に取り組むことを重要としています。
それにより、大きな成長が見込め、生産性の向上も期待できるでしょう。
そのため、MBOは、社員のノルマ達成や成果を押し付けるものではなく、社員自身が理想とする目標像を実現できるような目標の設定がポイントです。
成果までのプロセスも評価する
評価によっては、期待していた評価と違う場合、社員は悩むこともあるかもしれません。
MBOの達成度のみの評価だと、業務的でやや冷たい印象を受ける社員もいるでしょう。
そのため、マネージャーは評価の理由を丁寧に説明する必要があります。
また、成果だけではなく達成するまでの行動や取り組みなどのプロセスや、日々の姿を褒めて認めてあげると評価を納得してもらいやすくなります。
評価以外にも、業務に対する姿勢や他メンバーに対する接し方などを人事評価の際の面談で合わせて伝えると、信頼関係も深まり次回に向けてのモチベーションをあげられるでしょう。
まとめ正しく適切に目標管理し、MBOを効果的に活用する
MBOは、まず管理職のマネージャーが正しく理解し、適切に目標管理を行うことで、効果を発揮できます。
目標管理の設定するポイント
- 測定しやすい具体的な目標を設定する
- 達成できる目標のレベルを設定する
- 達成する期間の設定する
- 具体的に取り組む実践行動を設定する
- 組織の目標に沿った個人目標の設定する
上記の目標管理の設定のポイントを押さえ、正しく運用することで社員の能力向上とモチベーションの維持が期待できます。
適切な評価を行い、MBOを効果的に活用しましょう。
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