MBOとは
MBOは、Management By Objectivesの頭文字を取った略称で、目標管理型の制度を意味します。
会社が掲げる目標と個人の目標をリンクさせ、社員の自主制を前提に成果を出すためのセルフマネジメントによる管理方法です。
MBOでは、社員が自ら目標達成のためにタスク管理を行います。
その目的は、必要なタスクの効率や達成状況を可視化し把握することで、どのくらい成果を生み出したかを客観的に管理できることです。
MBOにおける目標設定のポイント
MBOにおける目標設定のポイントは、下記の4つです。
- 社員が自ら目標を設定し、会社の目標とリンクさせること
- 設定した目標と達成のための行動は具体的に決めること
- 努力して100%達成できる内容であること
- 期限を定め、期限内で達成できること
目標設定は、簡単に達成できるものでも、現実味を帯びない高い目標でもなく、努力や創意工夫を行い自己成長をしながら達成できるレベルにすることが大切です。
また、MBOは客観的に達成状況を判断しやすいため、次の仕事や給与などの人事評価に活用されます。
OKRとは
OKRとは、Objectives and Key Resultsの略称で、目標と主要な結果を意味します。
OKR管理は高い目標を達成するための目標管理手法として、さまざまな企業で導入されています。
また、企業全体の経営戦略やビジョンを基に数値目標を設定し、組織単位で何をすべきかを明確にし、目標達成を目指すものです。
目標設定のポイント
OKRにおける目標設定のポイントは、下記の4つです。
- 数値で表せない目標を設定すること
- 組織や社員のモチベーション向上させる内容であること
- 達成度60%〜70%程度で、少し高いレベルの目標であること
- 期限を定め、期限内で達成できること
OKRでは、高めの目標設定にし「みんなで頑張って、達成しよう!」という社員の団結力が高まり、モチベーションのアップと維持につながる目標内容にすることが大切です。
MBOとOKRの違い
目標を設定し、達成に向かって行動するMBOとOKRは、どのような違いがあるのでしょうか。
6つのカテゴリを比べ違いを見ていきましょう。
目的
MBOとOKRの目的は、両者とも同じく企業の生産性を高めることです。
しかし、人事評価に活用するかどうかに違いがあります。
- MBO:社員の個人目標の達成度合いを人事評価に活用する
- OKR:人事評価とはリンクさせず、挑戦的な高い目標設定をする
MBOは、目標達成度が高いほど、給与に反映させ個人の金銭的な評価に直結させることが特徴です。
そのためMBOの目標設定では、低すぎることなく努力しだいで達成できる目標内容にする傾向があります。
一方で、OKRは、企業の生産性の向上が一番の目的なため、個人の評価とは切り離した企業の目標の設定を行います。
OKRを導入する目的は、組織が迷わずに目標に向かって努力できるようにするためです。
またOKR管理では、組織ごとに目標達成するために成果を出せる数値で提示されます。
実施期間
次に、MBOとOKRの実施期間を見ていきましょう。
両者の設定するポイントでも挙げましたが、期限を定め期限内で達成できることが大切です。
その実施期間は、下記の通りです。
- MBO:半年〜1年のサイクル
- OKR:四半期サイクルで設定するため、3か月に1回は目標を見直し
こちらは、OKRの方が短いスパンで見直し、軌道修正しながら運用します。
レビュー頻度
レビューとは、マネージャーとメンバーが面談し現状把握と目標達成に向けて方向性が間違っていないか、確認・改善するための時間です。
こちらも両者を比べると、MBOよりOKRの方がレビュー頻度が多くなります。
OKRの目標を常に頭に置いて日々の業務に取り組めるよう、毎週すり合わせることが理想です。
一方で、MBOは、実施期間内での、中間期間で1度面談を行います。
MBOは、社員が自主的に目標管理するものであり、自分で管理している状況を中間期間でマネージャーと確認し、ときには軌道修正が必要な場合もあるでしょう。
目標達成の測定基準
目標の測定基準も、両者で異なります。
MBOでは、企業により測定基準が異なるため、一概には申し上げられませんが、明確で具体的な目標や努力次第で達成可能な目標レベルが一般的な基準です。
一方OKRでは、SMARTの法則を取り入れる企業が多い傾向にあります。
SMARTとは、下記の5つの指標を表したフレームワークです。
- Specific:具体性
- Measurable:測定可能性
- Achievabxe:達成可能性
- Related:経営目標との関連性
- Time-bound:期限
5つの指標から数値化し、具体的に測定するため客観的に測定できます。
定性的・定量的
OKRでは数値で測れない定性的目標を設定し、目標に基づく定量的指標を複数設けます。
定性的な内容と定量的な内容を組み合わせた目標設定が特徴です。
一方で、MBOは定性的や定量的などの目標設定にルールは特にありません。
企業によっては、さまざまな組み合わせが可能で自由に設定できます。
一般的には、定性的な目標と定量的な目標の両方が使用されることが多いです。
目標の共有範囲
MBOでは、個人的な目標管理をするため組織全体に目標を共有することはありません。
共有範囲は、対象者やその上司、またはチーム内に限られます。
一方、OKRは個人の目標がチームや企業の目標に連動しているため、OKRの目標の共有範囲は組織全体におよびます。
そのため、企業の目標を広く共有し、足並みを揃え1人ひとりがその目標に向かえることが特徴です。
達成基準
次に、両者の達成基準の違いを改めて見ていきましょう。
MBOでは、個人目標のためノルマを設定する人事評価制の強いシステムです。
そのため、なるべく達成度100%を目指すことが基本となります。
それに比べ、OKRでは目標は組織の成長を促すことであり、100%達成する目標設定だと成長につながらないと考えます。
社員のモチベーションアップとチャレンジ精神を引き出すような達成基準を高めに設定されることが多く、達成度合いは60%〜70%を目指すような目標設定される傾向が多いです。
OKRについてより詳しくは、ぜひこちらの記事をお読みください
『OKR管理とは?そのメリットや、KPIやMBOとの違いを徹底解説』
MBOの4つのメリットとは
OKRとの違いを理解したうえで、MBOを導入するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
ここで紹介する、MBOのメリット4つをぜひ導入の参考にしてください。
社員の能力アップにつながる
MBOは自分で目標設定し、自主的に管理するためモチベーションの維持ができ、個人の能力アップにつながります。
組織やチームの目標を決定する場合、マネジャーや役員が考える場合が多くどこか自分ごとと考えづらくなります。
そのため、目標を達成してもモチベーションが上がりにくいです。
MBOでは、自分で目標を設定し自主的に取り組むため、目標達成のために熱意を持ち業務に取り組め、能力のアップも可能となります。
また中間レビューではマネジャーと目標達成の進捗を管理し、1on1などでフィードバックをもらうため、自省しながらスキルアップが可能です。
取り組んでいる内容が間違っていないという安心感と、取り組む姿勢が評価されるという充足感が得られ、目標達成に向けてモチベーションアップや能力アップが期待できます。
社員のセルフマネジメントができる
MBOでは社員が自分で目標を設定し、社員自身で目標達成への進捗を管理するため、社員がセルフマネジメントができるようになります。
目標に対して、他人ごとにならず、「自分の目標を自分で管理する」という意識で取り組めば目標達成に向け、日々の業務の自己管理もできるようになるでしょう。
企業の方向性が定まる
MBOは、組織や会社の目標を元に、チームや社員自身の目標を設定します。
個人のそれぞれの課題を元に目標設定するのではなく、企業目標を達成するために目標を立てるため、企業全体の方向性が定まり、同じ方向を目指した取り組みを行うことが可能です。
そのため、MBO目標設定を行う際は、マネージャーと相談し方向性を合わせることで、企業全体として統一性をもった目標を全員で目指せます。
企業全体の生産性が上がる
企業目標に沿った、個人目標を設定し全員で取り組むことで、企業目標の達成にも可能性が高まります。
それにより、企業全体の生産性の向上にもつながります。
目標が未達成の場合でも、課題や問題点を取り除き次回の目標達成に向け行動を改善し、成果につなげられるでしょう。
MBOの注意点とは
次に、MBOを設定するうえで、注意する点を見ていきましょう。
目標設定が低くなりやすい
MBOの目標の達成度は、直接人事評価に関わるため目標を低く設定する場合があります。
目標の達成度が低いと、報酬も低くなり、「頑張っても意味ない」などとモチベーションが下がる恐れがあるため、達成するには難しい目標は立てられません。
一方で、社員にとって達成しやすい目標にすると、企業にとって生産性の低いものになりかねません。
そのため、自社の制度を数年ごとに見直す必要があります。
同じ目標設定を10年20年続けていても社員や時代からズレてくる場合があるからです。
目標の共有範囲が狭くチームワークが低下する恐れがある
MBOは、人事評価に関わるため、マネージャーやチームなど限られたメンバーのみで目標を共有します。
そのため、会社全体や全員の動きの把握が難しくなる可能性が高いです。
チームごとに目標を達成するために目標設定を行うことで、チーム間の連動が難しく部分的に最適化されるため、企業全体としてチームワークが低下する可能性が見られるケースもあります。
そのため組織全体でズレが出ないように、チームの目標だけでも共有することをおすすめします。
評価者の負担が増える
MBOを導入すると、評価者であるマネージャーの業務が増える恐れがあります。
メンバーの目標設定が企業の目標に沿っているかの確認を行い、さらに日々の目標達成に向けた進捗の確認も通常業務に加わるため、負担が増えることが想定されるでしょう。
MBOとOKRの向いている企業は
MBOとOKRの違いとMBOのメリットについてご紹介してきました。
ここでは、自社がMBOとOKRどちらを導入したらいいのか選び方をご紹介します。
選ぶ基準
MBOは、個人レベルで目標設定ができるため柔軟に対応できます。
また、それに対する達成度を数値化できない部分の評価も可能です。
一方でOKRは、企業の目標を達成するために、各チームや個人が何をすべきかという目標設定の方法になります。
MBOが向いている企業
MBOに向いている企業は、ピラミッド型です。
MBOは個人の目標を自ら設定し、自主的に目標管理をします。
また、個人の目標を組織やチームの目標と連動するため、組織の管理体制が階層的に分かれているピラミッド型の企業に適しています。
OKRが向いている企業
OKRに向いている企業は、臨機応変型です。
臨機応変型の企業は、組織全体の大きな目標に合わせ、チームや個人の目標やタスクを設定します。
比較的短いスパンでフィードバックを行い、検証や軌道修正をするためスピード感が必要な企業に適しています。
MBOとOKRの併用
MBOとOKRはそれぞれ違ったメリットがあるため、併用して導入も可能です。
MBOは人事評価や給与に関わる目標設定であるのに対し、OKRは評価や給与と紐付けない目標設定であるため、MBOのデメリットをOKRで補うように設定できます。
そのため自社にあった手法を取り入れ、それぞれの範囲や特徴に合わせて併用してみることもおすすめします。
まとめMBOとOKRの違いを理解し自社の運用方法を見出す
今回は、MBOのご紹介を中心にMBOとOKRの違いについてご紹介しました。
MBO
- 組織目標に沿った個人目標で人事評価に直結している
- 数値化しにくい目標でも達成度で評価できる
- 達成できる目標レベルで、柔軟に無理なく評価できる。
OKR
- 企業の全体的な方向性を示し、社員一丸となる目標設定
- 挑戦的な目標でモチベーションアップと能力アップを期待できる
- 個人の人事評価には関連していない。
MBOとOKRの特徴を理解し、場合によっては併用するなど自社にあったオリジナルの運用方法を見い出し、企業の生産性の向上できる目標管理方法を選択してください。